【書評】99%の人がしていないたった1%の仕事のコツ 河野英太郎 感想・レビュー


今、この瞬間から誰でも実践できることがある

『仕事を効率的に進め、着実に目標を達成するためには、ちょっとした工夫さえすればよいのである。』著者は冒頭でそう述べる。若者向けのビジネスセミナーでの常套句のような文章である。実際はそう簡単にはいかないような気がする。しかし彼はこう続ける。『書いてあることは当たり前のことや、本当に些細なことと感じるようなことかもしれないが、意外に実行している人は少ない。おそらく99%の人が実行していないことかもしれない。』と。著者が表題に込める『1%の仕事のコツ』はここである。些細なことなのに、99%の人が実行していないこと。本書はそれらをすぐに実践できる行動レベルまで記したビジネスにおけるハウツー本である。

常にデスクに置いておきたい本

本書は8章で構成されているが、驚くことにどこから読んでもすぐに役立つ。見開きで完結するように工夫されているため時間がない時は開いたページのみ読めば良いのである。8章は「報連相のコツ」「会議のコツ」「メールのコツ」「時間のコツ」「チームワークのコツ」…等といった形でシーン別に分けられているため、自分に必要な章だけ読むことも可能である。忙しい現代人のための本である。腰を据えて時間をかけてすべて読むというより、常にデスクに置いておき、必要なところを短時間で読むほうが適しているだろう。しかし常にデスクに置いておくと良い最大の理由は以下に記す本書の内容にある。

納得して実践しやすい方法論の中に時々著者のオリジナリティが光る

記されている工夫の数々はすぐに納得ができ実践しやすいものばかりである。しかし読み進めていくと、その中にちらほらと「そういう手があるのか」と唸りたくなる著者のオリジナリティが垣間見える。それは一般論ではない、ビジネスにおける合理性を追求した著者ならではの行動のコツである。「コミュニケーションのコツ」の章で語られる『オフィスでは真ん中を歩く』は特にそれが表れている。コミュニケーションの機会は多ければ多いほど、物事が前に進んだり、新しい発想が生み出されたりする可能性が高まると著者は考えている。だから「朝、出勤するときに、会社の玄関あるいはエレベーターホールから自席に向かうまでのコース取りを工夫する」のである。目が合った人と朝の挨拶を交わすだけでなく、何気ない会話に加えて「昨日の飲み会の時ご相談した件、実行しませんか?」などと気軽に話しながら仕事を前に進める機会を増やすのである。自席への最短コースを取らずに隣の部署の島と島のあいだをあえて通ってみることも良い。あるいは実際に会話をしなくとも、机の上にある資料や書籍を目にするだけで「あの人こんな情報持っているんだ」という情報収集の機会になるし、同僚の顔を見て「彼からもらった例のメールの件、締め切り今日だったな」など確認の機会にすることもできるのである。これについては若手社員や新人社員が同じことを実践できるかは疑問だが、こんなオリジナリティあふれるコツも散りばめられているのである。ビジネスにおいてどんな場面も無駄にしない「合理性」と仕事をどん欲に進めようとする著者の姿勢が反映されている。

全体のテーマはいかに「合理性」を高めるか

各章でさまざまコツが提案されているが、それらの目的はすべてビジネスの「合理性」を高めるためのものだと言える。「合理性」を高めるための「行動」のコツが大半を占めるがその中に「思考」のコツもさりげなく挿入されている。これについても著者のオリジナリティが垣間見える部分だ。「チームワークのコツ」の章での『「あいつ使えない」は敗北宣言と考える』では、『「あいつ使えない」という表現は「あのひとは役に立たない」という意味ではなく「私にはあの人を使う能力がない」という意味だ。「あいつ」と指をさした手の指のうち3本は自分に向かっている』と記す。これを読むと、「あいつ使えない」などという恐ろしい言葉を二度と使わないようにしようと誰もが思うだろう。他責にしている自分の敗北であり、いかに発想の転換をして前向きに物事を進めることが重要かを思い知らされる。このように、本書で記されている「思考」を変えるコツの多くは、ネガティブをポジティブに変えるための方法である。仕事がうまく進まない、苦手な人とやっぱりうまくいかない、などと悩んだ時の解決の糸口になるかもしれない。先にも述べているが、本書は常にデスクに置いておき、必要なところを短時間で読むという読み方が適している。「行動」においても「思考」においても、ちょっとしたつまづきに対してすぐできる「コツ」を提案し、あなたを助けてくれるのである。ビジネスパートナーのように傍らに備えておきたい本である。
全体を通して、本書はビジネスの「合理性」を高めることに特化していると言ってもいいだろう。著者の考えを記す部分は最小限に抑えられ、コツそのものの結論と根拠をコンパクトに詰め込んだまさに「合理性」の高いビジネス書である。